金瀬胖直伝◆暗室改造術
暗 室=永井朋子(研究科)
立会人=大島秀男(研究科)
文・写真=金瀬 胖
自分の生活空間にどう暗室を作るか、写真を本格的にやろうと志した時、誰もが直面する大問題。臭い、暗い、一人でこもる、であるからしばしば家族周辺を巻き込む大問題となる。私など、以前マンション暮らしの時、別にアパートを借りようとしたが、「家にいる時間が皆無になる」と妻に反対され(つまり愛があったのであろうが)、六畳の部屋を半分に仕切って流しを作り、苦労して遮光・換気の対策を重ねた。が、ある時、猫が暗室のドア前の棒を倒し、朝まで中に閉じこめられるという事件が起きた。猫ではなく妻だという説もあるが、私は今も猫説を信じている。かくして私は暗室作りの名人となったのだ。
というわけで、正月早々暗室改造班は王子駅に集まり、畳の食事もそこそこに現地に赴いた(のではなく、金瀬は駅にエスカレーターをつける工事をしているのが面白く、三十分ほど写真を撮っていた。立会人大島秀男の証言)。永井さんは若い女性の一人暮らしだから、立会人として大島君に来てもらった。アパートは流行のマンション風ではなくて、年季の入った木賃1DKである。昔、現研の授業の後、同級の郷司正巳君の四畳半のアパートで氷酢酸の臭いを嘆ぎながら、皆で口を尖らせて徹夜で写真論議をしたことを思い出した。


伸ばし台はしっかりと
さて、肝心の伸ばし機。小さな折り畳み式テーブルの上にかろうじて乗り、がたがた揺れて水平も出ていない。これで結構いいプリントを持ってきていたから不思議。神業。直ちに断固としてテーブル買い替えの決断を迫る。ここは全ての基になるから金やスペースを惜しんではいけない。近所の家具屋で探したら五千円ほどでちょうど良い台が見つかった。伸ばし機の前の壁は反射しないように暗い色の壁紙を張る。
遮光は完壁を期すべし
窓は暗室カーテンで閉める方式だが、わずかに光もれしていた。永井さんは「これで夜になれば大丈夫です」と言うが、明るい昼間も作業できるようにDK全体を遮光することにした。一部を仕切るよりそのほうが工事も簡単なのだ。台所の窓ガラスは塩ビシートに窓穴をあけて張り、暗室作業の時はこの穴を別の黒シートを張りつけてふさぐ(差込式にしても良い)それだけで暗室になる。窓が少し小さくなるが剥がせば、外光が入り明るくなるので台所として問題はない。黒がいやなら、この上に壁紙を張る。このシートを張り、黒テープで目張りするとサッシ枠窓なので、完全に遮光した。カーテンは湯沸かし器に触れるようなところでは出火の危険があり、遮光性も不安だ。
隣の六畳の部屋との境目には襖に2×2メートルのカーテンを設置した。できれば、襖自体を細工してカーテンなしで遮光したいのだが (今、頭の中でその図を描いている。大きな黒カーテンは生活空間ではどうもうっとうしい)。
反対側の窓のカーテンは流し前と同じ方式に変える。これで完璧、と思ったら換気扇からわずかに光漏れしていた。これを窓に使った材料で黒箱を作り空気道をあけてカバーしたらOK。
安全光はマルチグレード専用フィルター付きの新品に買い換え、バットから一・五メートル上の天井からつるした。

バット・水周り
暗室では伸ばし機などのドライスペースと、現像・水洗などの水場を離すのが基本。近ければ流れ作業的で便利なようだが、液が飛んだりして、ネガやペーパーなどが汚染されやすい。少し離しておくと、「露光した、さー現像するぞ」というメリハリもつく。
永井さんはガス代の上にスノコを置き、そこにバットを並べていたが、伸ばし機用の以前の台があいたので、それをバット置きに使うことにした。これなら、作業中食事も作れるし、大移動なしに作業にかかれる(もしガス代の上を使うならしっかりとした液漏れのしないカバー板を作って乗せたほうがいい)。そして流しにバットをもう一枚重ね、仕上げ水洗もできるよぅにした。できれば定着も二液式として仕上げ定着した方がいい。流しに全紙から半紙程度の塩ビ板を立て、プリントの水切り、色見に使うと便利。水の中でプリントを上から見ると実際より明るく、硬めに見えるからだ。これはぜひ試されたい。改造前の台所暗室
チェック1 光漏れ
全てのライトを消して五分眼を慣らす。すると宵の明星のごとく外光が輝き始める。それは必ずカプリのもとになるから手当てをする。暗室のカプリチェックはセーフライトを灯け、印画紙の上に硬貨を四〜五分置いて現像し、他の部分と差が出なければ、つまり硬貨の形が出なければよい。伸ばし機自体が熟放出の隙間から光漏れする機種があり、すぐ近くの壁・天井は反射防止などの対策が必要。
チェック2 水平など
水準器で伸ばし機のテーブル、イーゼル面、ネガキャリア面の全てが水平で平行面となっているか確かめる。特に伸ばし機を移動する人は毎回確認すべきだ。挨かぶりも多いから、使わない時はカバーしたほうがいい。レンズは必ずはずして乾燥ケースに入れておくこと。レンズ表面に汚染ガスが付着すると解像度が極端に低下する。
チェック3
決算 机一台、セーフライトセット、ダークカーテン、遮光シート、バット、黒テープ、マジックテープ 合計一万九千円。 完成祝い飲み会一人二千円。



